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LINEヤフーのフルリモート縮小で考える、エンジニアの理想的な働き方とは

LINEヤフーのフルリモート縮小で考える、エンジニアの理想的な働き方とは

2024年12月、大手IT企業であるLINEヤフー株式会社が完全リモートワークの方針を撤回したことが注目を集めています。報道などによると、これまで完全リモートワークが許容されていた部門も原則月1回の出社が必須になるとされています。

こうした勤務体制や制度変更はエンジニアの働き方にどのような影響があるのでしょうか。リモートワークとオフィス勤務をめぐる様々な意見を紹介、解説していきます。

LINE ヤフーの決定が業界に波紋

日本を代表するIT企業の一つであるLINEヤフーが、これまでの方針を変更し、従業員に定期的な出社を求めるようになったことが注目を集めています。

LINEヤフーは、コロナ禍を契機にリモートワークを推進し、2020年9月にはコロナ終息後もリモートワークを続けることをX(旧Twitter)上でアピールしていました。これまでは各部署が個別に出社の頻度を定める方式でフルリモートも可能となっており、地方在住のメンバーもいると言われていました。

しかし、2024年12月にこうした方針の変更を発表。2025年4月から事業部のメンバーは原則週1回、開発部門やコーポレート部門の従業員は原則月1回の出社が必須になると言われています。

制度変更についてのリリースの中で、LINEヤフー社は「さらに新しいプロダクトを生み出すためには、コミュニケーションの質を強化することが必要だと考えています」とコメント。社員間のコミュニケーション活性化やそれによる新たなサービス開発への期待が、こうした制度変更の背景にあると考えられます。

しかし、「完全リモートワーク可」というワークスタイルに魅力を感じていた人も多かったため、今回の発表が社内外で大きな波紋を呼ぶ結果となりました。

LINE ヤフーの「出社推奨」の決定に賛否両論

今回のLINEヤフーの発表には、IT業界のみならず様々な意見が寄せられています。以下では、賛否それぞれの意見を紹介していきます。

賛成意見

 

賛成派の多くはリモートワークによる生産性の低下を指摘しています。生産性が低下したという明確なデータがあるわけではないものの、LINEヤフーの株価が上昇していないことなどから、より高い生産性を実現するための手段の一つとしてフルリモート廃止を支持する意見もありました。

また、定期的な出社により、同僚とのコミュニケーションが発生し、社内のつながりやメンタルヘルスの安定に資するのではないかという声もあります。

さらにマネジメント側の負担の問題も考慮する必要があります。リモートワークでも自律的に業務を推進し成果を残すことができる人材もいれば、細かい指示を受けた方が効率よく働くことができるという人もいるでしょう。こうしたそれぞれの特性に応じたマネジメントが必要になるという点において完全リモートワークはハードルが高く、出社前提の働き方の方が好ましいという考えもあるでしょう。

反対意見

 

今回のLINEヤフーの方針変更について、これまでの経緯から反発を感じている人も多いようです。前述したようにLINEヤフーはリモートワークを継続する方針を打ち出し、採用を行ってきました。そのため、リモートワークが続くことを期待して入社した人は裏切られたように感じる場合もあるでしょう

また、コミュニケーションが業務に有効であり、生産性向上に寄与する点には同意できても、出社回数を義務付けるという方法を取る必要はないという意見もありました。

リモートワークであっても、同僚間のコミュニケーションの活性化は可能であり、出社を義務付ける以外の方法を模索するという手段もあるでしょう。

また、現実問題として育児や介護など様々な事情で出社が難しいというケースもあります。そのため、フルリモート可という方針を変更することで優秀な人材を採用できなくなってしまうリスクを指摘する声もありました。

米アマゾンは週5日出社義務化へ、他の有力企業も出社を推奨

日本でリモートワークをめぐる論争が巻き起こる一方で、アメリカの企業では出社回帰の流れが加速しつつあるように見えます。

例えば、Amazonは2024年9月から世界中の従業員に原則として週5日の出社を求める方針を発表しています。また、FacebookやInstagramなどのサービスを運営しているMetaやGoogleといった企業も週3日程度の出社を前提としたハイブリッドワークを推奨しています。

また、コンサルファームKPMGが世界の企業経営者約1300人を対象に行った調査によると、「3年以内に従業員がオフィス勤務に完全復帰する」と応えた経営者が8割強に達しています。さらに回答者の87%が「オフィスに出勤する従業員には配置や昇給、昇進で報いる可能性が高い」としており、世界の経営者の多くが出社を重要視していることがうかがえます。

実際、テスラの創業者として知られるイーロン・マスクも週40時間以上のオフィス勤務を自従業員に求めており、従わない場合は辞職を求めていると言われています。

このようにコロナ禍の終息に伴い、オフィス回帰の動きは全世界的に拡大しつつあります。ただし、エンジニアはリモートワークを好む傾向がある職種であり、オフィス回帰に反対する声には根強いものがあります。

しかし、上述したような世界の企業の趨勢を考慮するとエンジニアだからといって、「フルリモート」にこだわりすぎると、転職時には自らの選択肢を狭めてしまうリスクがあるといえるでしょう。

エンジニアにとっての出社勤務のメリットとデメリット

<メリット>

エンジニアという職種にとってオフィスへの出社勤務にはどのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか。以下では、それぞれのメリット、デメリットについて解説していきます。

1.迅速なコミュニケーション

オフィスに出社し、デスクを並べて働くことで迅速なコミュニケーションが可能になります。リモートワークの場合、些細な質問でもテキストにまとめてslackなどのコミュニケーションツールに投稿し、相手からの返事を待つ必要があります。

しかし、オフィスにいれば、隣にいる同僚や上司に話しかけるだけで疑問を迅速に解決できる可能性が高いでしょう。

2.チームワークの強化

繰り返し見たり、会うなど接触する機会が多いほど、警戒心が薄れ、親しみを感じやすくなるという心理学の研究があります。こうした単純接触効果と呼ばれる心の動きは、出社によりコミュニケーションが増加することで、チームワークが強化される可能性が高いことを示唆しています。

リモートワークであれば、終日同僚と顔を合わせることなく、その日の業務が終了してしまうというリスクがあります。しかし、オフィスに出社すれば長時間話し込まなくても、ちょっとした挨拶や雑談などによりコミュニケーションが生まれます。

そうした同僚や上司との接触はチームワークの向上に寄与し、生産性の向上にもつながるでしょう。

3.即時のフィードバック

エンジニアに限らず、業務においては成果物の品質や完成度を上長にチェックしてもらう機会が多くあります。こうした場合のフィードバックは、テキストだけで行うとコミュニケーションの齟齬が起こりやすくなります。

ZOOMやGoogleMeetなどのリモート会議ツールを利用するという選択肢もありますが、直接顔を合わせて行う場合より効率は低下していると考えられます。同じ書類やPCの画面を見ながら迅速にフィードバックを受けることで業務がスムーズに進みやすくなるでしょう。

4.社内文化やネットワーキング

会社員として働き、成果を出すためには、社内文化や他部署の業務内容についても理解する必要があります。自身の仕事だけに集中するというスタイルが悪いというわけではありませんが、それだけではより責任ある業務を任せてもらえる可能性は低くなります。

例えば、休憩スペースなどでの会話をきっかけに他部署との連携が進むことなどもあるでしょう。そこから社内の別部署のエンジニアが抱えている課題を一緒に解決したり、最新の技術について勉強会を開くなどの取り組みを推進すれば、社内での自身の立場も強化される可能性があります。

こうした観点からも偶発的にコミュニケーションが発生しやすいオフィス勤務にはメリットがあると考えられます

デメリット>

1.通勤時間がかかる

通勤は、多くの人にとってストレスになりやすい要素の一つです。特に都心にオフィスがある場合、満員電車を利用しなければならず、リモートワークに慣れた身体には負担になりやすいと考えられます。

また、通勤時間そのものもデメリットの一つと言えます。リモートワークであれば、通勤に充てていた時間で業務やエクササイズ、スキルアップのための勉強をすることもできます。

しかし、こうした時間の使い方は出社が前提のワークスタイルでは難しくなりそうです。

2.働き方の柔軟性がなくなる

リモートワークであれば、突発的に起こる様々なトラブルに対して、柔軟に対応することが出来ます。例えば、子どもが急に熱を出した場合でも夫婦のどちらかが保育園に迎えに行き、交代で看病しながら片方が業務を遂行するということもできるでしょう。

しかし、出社が前提になってしまうと、こうした緊急事態への対応が難しいため夫婦間で役割分担を決めざる得なくなります。負担が夫婦の片方に偏るようなことがあれば、関係性が悪化する恐れもあります。

3.他人の干渉や雑音があり、集中できない

リモートワークに慣れてしまうと、オフィスで多くの同僚と一緒に働くことが負担になる可能性があります。リモートワーク前は気にならなかったキーボードを叩く音や咳払い、貧乏ゆすりといった行為に集中力をそがれてしまうことがあります。

また、急に出社が増えたため個室スペースが足りず、自席でリモート会議に出席せざる得ないというケースも頻発しています。周囲でリモート会議している同僚が多くいるような環境で集中して作業を進めるのは難しいでしょう。

エンジニアにとってのフルリモートのメリットとデメリット

続いて、エンジニアという職種にとってのフルリモート勤務のメリット・デメリットを解説していきます。

<メリット>

1.柔軟な時間管理

フルリモート環境であれば、育児や介護など家庭の事情にあわせた柔軟な時間管理が可能になります。子どもの食事の用意や寝かしつけなどをした後に業務に戻ることもできるでしょう。

また出社の必要がなくなることで、ワーケーションやリスキリングのための海外留学といった選択肢も出てきます。実際に、フィリピンなど時差が少ない国に留学しながら勤務を行っているという事例もあります。会社が設定しているコアタイムの時間帯にもよりますが、出社から解き放たれることで海外も含めた場所の制約はなくなると思ってよいでしょう。

また、会社にとっては住んでいる場所の制約を気にすることなく、優秀な人材を採用できる可能性がある点もメリットと言えるでしょう。

2.通勤時間の削減

通勤がなくなることで、通勤のための時間を他の事に充てることができます。健康維持のためのジム通いや、自己研鑽のための勉強など業務にプラスの効果が期待できる取り組みに時間を充てることが出来る可能性もあります。

また、通勤がなくなることでインフルエンザなどの感染症リスクも下げることが出来るでしょう。業務時間中の生産性を維持することができれば、マネジメント側にとってもメリットがあると考えられます。

3.仕事環境のカスタマイズ

キーボードやモニタなど業務に使用するデバイスにこだわりがあるという人も多いでしょう。1人だけ特別扱いすることは難しいという理由でオフィスでは利用できない高価なデバイスもリモート環境であれば使用することが出来ます。

自身のお気に入りのキーボードやマウス、モニタなどを使うことで生産性を高めることができる可能性もあるでしょう。

また、お気に入りのアロマを焚いたり、BGMをかけるなど自分だけのこだわりを実現することもリモートワークであれば可能になります。理想の就労環境を実現できれば、モチベーションも維持しやすくなるでしょう。

4.コスト削減

企業の視点から見ると、リモートワークにはコスト削減というメリットがあります。

都心の一等地にオフィスを保有するためには、莫大なコストがかかります。また、多くの従業員のデスクや備品を用意するための経費や、空調やエレベーターなどの電気代などオフィスを維持するためにも多くのコストがかかっています。

リモートワークを実現することで、こうしたコストをなくすことが出来ます。完全リモートワークでなくても、出勤を部署ごとの交代制にできればオフィス規模縮小は可能になるでしょう。ここで削減したコストを採用や人材育成に利用することもできる点も企業にとってはメリットと言えます。

<デメリット>

1.孤立感やコミュニケーションの不足

リモートワークの場合、基本的に独りで黙々と作業を進める必要があります。場合によっては、誰ともコミュニケーションを取らずに1日が終わるということも考えられます。

周囲とまったくコミュニケーションを取らずにいるとメンタルに悪影響が生じやすくなります。リモート環境では偶発的に発生するコミュニケーションがなくなるため、周囲と人間関係を深めることもできず、中途入社などの場合は特に孤立感を感じやすくなってしまうでしょう

2.自己管理能力の必要性

一定以上のキャリアがある人であれば、業務の進捗状況や自身のスキルなどを適切に判断した上で、業務時間を配分することができます。しかし、自身の判断だけで業務を推進することが難しい新卒や経験の浅い人たちにとっては、リモートワークはハードルが高い場合があります

リモートワークでは、状況を的確に把握し、時に自分を律しながら業務を進めなければなりません。また睡眠が不足している場合など、オフィス勤務であれば周囲の目を気にして耐えなければいけない場面も、リモートワークでは気軽に休むことができます。

結果的に、自分自身でモチベーションを維持できない人や、自分を甘やかしやすいタイプの人は生産性を高めることが難しくなるでしょう。

3.キャリアの成長機会の欠如

リモートワークでは、非公式な交流や社内人脈形成の機会が減少し、同僚や上司からの評価が不明瞭になりやすくなります。また、上司からの指導の場が少なく、キャリアパスが不透明になることも成長の妨げになる可能性があります。

さらに前述したような孤立感によりモチベーションが低下し、自己成長が阻まれる場合もあります。こうした要因によって、リモート環境ではオフィス勤務に比べてキャリア成長の機会が減少することが懸念されます。

4.仕事の進行具合の把握が難しい

リモートワークでは、コミュニケーション不足によって、仕事の進捗管理が難しくなります。チームメンバー間の直接対話が減るため状況把握が遅れ、タスクの優先順位がずれやすくなります。

さらに、自己管理能力のばらつきや技術的な問題によって、業務の進捗が滞りやすくなるリスクもあります。適切なプロジェクト管理ツールがない場合、情報共有も困難になり、メンバーが心理的な障壁によって報告をしづらくなることも考えられます。

こうした要因が重なると、マネジメント層は業務の進行状況の把握が難しくなります

特別な事情がないかぎり、リモートワークにはこだわりすぎないほうが無難

これまで解説してきたように、エンジニアにとって、出社勤務とフルリモート勤務にはそれぞれ異なるメリットとデメリットがあります。ただ、現在の世界的な情勢としては完全リモートワークを見直し、出社と組み合わせたハイブリッド勤務を進める方向にあります。

長期的には、完全出社勤務へと回帰する可能性もゼロではないでしょう。そのため、フルリモートという働き方にこだわりすぎると、自身のキャリアの選択肢を狭めてしまう可能性もあります。

リモートワークと出社勤務、それぞれの利点を活かした上で、どちらにも柔軟に対応できるようにしておくことで自身の可能性を広げることができるでしょう。また、企業側としては、出社とリモート双方のメリット・デメリットを把握したうえで、今後の働き方の新しいモデルを模索することが求められています。

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