AIが奪う仕事・残る仕事:職種別・工程別でわかる最新技術動向
AI技術の急速な進化により、「この仕事は将来なくなるのでは?」という不安を抱く人が増えています。しかし実際には、AIは“人の仕事を奪う”だけでなく、“人の仕事を変える”存在でもあります。
この記事では、エンジニア業界における最新のAI動向をもとに、職種別・工程別に「AIに代替されやすい仕事」「AIと共存し価値を高める仕事」を具体的に解説。これからエンジニアを目指す人が、どんなスキルを身につけるべきかについて考察していきます。
エンジニアの仕事が変わってきている

生成AIや自動化技術の発展により、エンジニアの仕事構造は大きく変わりつつあります。コーディングやテスト、ドキュメント作成といった「ルール化しやすい業務」はAIとの親和性が高く、すでに自動化が進行中です。
実際、ガートナージャパンは、2030年までに“AIを使わずに人間が行うIT業務はなくなり”、AIを活用した業務が75%、AI単独による業務が25%を占める見通しを示しています。こうした状況から、今後は「AIをどう設計・検証・運用に活かすか」という視点が求められる時代になります。
具体的には、これからのエンジニアには、単に「コードを書く」力ではなく、「AIをどう設計・検証・運用に活かすか」という視点が必要になってくると考えられます。
AIが代替しやすい領域 : 定型化・ルール化しやすい仕事

ここからは、実際の職種や工程ごとにAIを活用あるいは業務を代替してもらいやすい領域を解説していきます。
①バックエンドエンジニア

バックエンドエンジニアは、システムの裏側でデータ処理やAPI設計、サーバー連携などを担う職種です。業務の多くがルール化・構造化しやすいため、AIとの親和性が高いGitHubといえます。
すでにGitHub CopilotやAmazon CodeWhispererなどが実装工程を支援し、定型的なコード生成はAIが中心的役割を果たしている部分もあるといわれています。また、「LLM設計補助ツール」と呼ばれる生成AIが、要件からクラス構造や関数設計を自動提案し、設計ドキュメントの生成も自動化しつつあります。
そのため、人間はより上流の設計判断やレビューに専念できるようになり、2030年には実装・テスト・保守の6割以上がAI主導になるともいわれています。
② フロントエンドエンジニア

フロントエンドエンジニアは、ユーザーが直接触れるUI(画面)部分の実装を担当するポジションです。フロントエンドエンジニア職において、AIとの連携が特に進んでいるのはデザインと実装工程と考えられます。
FigmaやFramerなどの生成AIツールが、デザイン案を自動生成し、UIコンポーネントを即座にコード化できるようになっています。そのため、開発者はAIが作った土台を微調整する役割へとシフトしていくと予想されます。
また、ChatGPTやGitHub Copilotによるフロントコード生成も一般化しつつあり、テスト面でもレスポンシブ確認やUIテストが自動化されるでしょう。2030年にはデザイン〜テストの約6割がAI主導となり、エンジニアは「見た目」ではなく「体験価値」をどう設計するかが問われる時代になる可能性があります。
③ インフラ/クラウドエンジニア

インフラ/クラウドエンジニアは、システムを支えるサーバーやネットワークの設計・構築・運用を担当する職種です。近年は「Infrastructure as Code(IaC)」によって、インフラ構築の多くがコードで自動化可能になりつつあります。
さらに2030年には、そのIaC定義自体をAIが生成・修正する“自動構築AI”が主流になると予想されます。Azure CopilotやGCP Duet AIなどのクラウド構成支援AIが、設計から構築・監視まで一貫して自動提案を行うようになる可能性もあるでしょう。
そうなれば障害検知やリソース最適化もAIが担うようになり、人間はセキュリティ判断や設計意図の精査といった上流判断に集中していく流れが加速していくと考えられます。
④テストエンジニア/QA

テストエンジニア/QAは、ソフトウェアの品質を守る最終ラインとして、テスト設計・実施・不具合分析を担当する職種です。この分野ではAI化の進行が特に顕著で、仕様書をもとにAIが自動でテストケースを生成し、テストの実行や結果報告までを自動で行う仕組みが普及しつつあります。
さらに、ログ解析AIが不具合を自動検出し、原因分析を支援することで、テスト工程全体のスピードと精度が飛躍的に向上すると予想されます。
2030年にはテスト実施の約9割がAIに代替され、人間は「どの品質を担保すべきか」「ユーザー体験をどう検証するか」といった抽象度の高い品質設計に集中する時代へ移行する可能性が高いでしょう。
⑤ PM/上流エンジニア

PM/上流エンジニアは、プロジェクト全体の進行を設計・管理し、クライアントとの要件調整やチームマネジメントを担う職種です。
AIの活用場面としては、会話理解AIが打ち合わせ内容を要約・整理し、要件定義のドキュメント化を自動支援するといった形が考えられます。進捗管理では、AIがスケジュールの遅延予測やリスク検知を行い、プロジェクトの健全性をリアルタイムで可視化できるようになる可能性もあります。
さらに、報告・分析業務も自動化が進み、2030年にはレポート作成の約7割をAIが担う見通しとなっています。人間の役割は「判断」と「合意形成」に特化し、AIが生成したデータをもとに戦略的意思決定を行うフェーズへと移行しています。
AIでも代替できない領域とは?
これまで解説してきたように、AIの進化によって定型業務の多くは自動化されつつあります。しかし、一方で依然として「人にしかできない領域」は確実に存在します。
たとえば、「顧客の要望を正確に理解し、ビジネス要件を技術的仕様へ翻訳する力」「曖昧な要件の背景を読み解き、最適な解決策を導く判断力」といったもスキルが挙げられます。また、チーム間の調整や合意形成といったコミュニケーション能力も不可欠でしょう。
AIは既知のパターンに強い一方で、不確実性や意図理解には弱点があります。
だからこそ「顧客の要望を翻訳する力」「曖昧な要件を設計に落とす力」「チームを導く合意形成力」など、人にしかできない非定型スキルがより重要になります。
AI時代に求められる3つのスキル

AIの普及によって、単純作業の多くはAIに代替されつつあります。しかし同時に、“AIを使いこなせる人材”の需要は急速に高まっています。AIを恐れるより、どう共存し、成果を最大化するか——。
これからのエンジニアに求められるのは、AI時代に適応した以下の3つのスキルです。
① 非定型スキル(要件理解・判断・コミュニケーション)
AIが最も苦手とするのは、曖昧な要件や人の意図をくみ取る領域です。顧客の課題を整理し、最適な仕様に翻訳する要件理解力、チーム間の調整を円滑に行うコミュニケーション力、そして状況に応じた柔軟な判断力。
これらの“非定型スキル”こそ、現在において人間がAIに勝る最大の強みとも言えます。
② システム全体の構造を把握する設計力
AIは特定タスクやモジュールの生成は得意でも、プロジェクト全体を俯瞰し最適化する力には限界があります。だからこそ、全体構造を設計できるアーキテクチャ思考を持つエンジニアの価値が上昇しています。
要件・設計・運用を横断的に理解し、AIの提案を取捨選択できる力が、チームの成果を左右することになるでしょう。
③ AIリテラシー(使いこなす力)
AIを「使える人」と「使いこなせる人」の差は急速に広がっています。プロンプト設計による的確な指示、AI生成コードの検証・改善、AIを活用したテスト自動化など、AIをツールとして制御できるスキルが必須です。AIを単なる補助ではなく、共同開発者として扱える人材が次世代の主役となるでしょう。
AI時代は「奪われる」より「広がる」時代

AI時代は、エンジニアにとって「仕事を奪われる時代」ではありません。むしろ、AIを適切に使いこなせる人材になることによって、「キャリアの可能性が広がる時代」です。
AIが定型的な作業を自動化することで、人間はより創造的で価値の高い業務に集中できるようになると考えられます。つまり、AIは脅威ではなく、エンジニアの働き方をアップグレードする強力なツールなのです。
いま、エンジニアリングの中心は「AIをどう使うか」にシフトしています。AIリテラシーと設計力を早期に身につけた人材こそが、市場で最も求められる存在となります。「AI時代のエンジニア」に適したスキルを身に着けることであなたのキャリアの可能性は大きく広がることになるでしょう。
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