飲食店の新人に指示が伝わらない。やさしい日本語で教えるときの確認手順
Unitas Pass編集部
飲食店で新人への指示が伝わらないときは、言葉を短くするだけでなく、対象を示し、作業を見せ、本人の動きで理解を確かめます。「はい」という返事だけで任せる範囲を広げず、どの説明で止まったかを確認しましょう。
この記事は、店長が接客と新人教育を兼ねる飲食店に向けて、日々の作業指示を整える方法をまとめたものです。日本語に不慣れなスタッフだけでなく、飲食の仕事や店独自の呼び方を初めて覚える人にも、同じ手順で確認できます。国籍や会話の流暢さだけで、仕事の理解度を決めないことが出発点です。
「日本語が苦手」で片づける前に、指示の中身を分ける
言葉の意味が分からないのか、作業の順番が分からないのかで、教え直す内容は変わります。同じ説明を大きな声で繰り返す前に、止まった場所を探してください。
たとえば「手が空いたら、あっちをいい感じに整えておいて」という指示では、開始時点、対象、仕上がりが決まっていません。経験者同士なら通じても、新人が判断するには情報が足りません。これは言い換えを考えるための例であり、実在の店舗の事例ではありません。
店長は「どの言葉が分からない?」だけでなく、「今、何をすると思いましたか」「使う物を一緒に指してください」と尋ねます。物を選べるのに手順が止まるなら、語学の説明を増やすより、動作を見せるほうが次の確認につながります。音が聞き取りづらいなら、いったん安全で静かな場所へ移り、説明する環境も見直します。
大阪市は、やさしい日本語を、分かりやすい言葉や表現に言い換えた日本語と説明しています。短く区切る、曖昧な表現を避けて具体的に伝える、といったポイントを挙げる一方、必ず理解してもらえる決まった答えはないとも示しています。[1] 店舗では、言い換えた後の確認までを一組にしてください。
一度の指示に詰め込まず、対象と終わりを示す
まず一つの作業に絞り、「何を」「どうする」「どこまで」を伝えます。新人が物や場所を見分けられるよう、実物や店内の表示と同じ名前を使います。
以下は、教える側が言い方を見直すための例です。実際の作業内容や置き場所は、自店の手順に合わせて変えてください。
| 伝わりにくさが残る言い方 | 言い換えの例 | 一緒に確認すること |
|---|---|---|
| あれを出して | この棚の白い皿を出してください。 | 実物を指し、同じ皿を選べるか確認する。 |
| 先にこっちをお願い | まず、メニューをこの箱に入れてください。 | 今の作業を止めてよいかも伝える。 |
| いい感じに並べて | この見本と同じ向きに並べてください。 | 完成した見本を見せる。 |
| 適当に聞いておいて | 分からないときは、今日の責任者に聞いてください。 | 責任者の名前と居場所を示す。 |
| 終わったら次もやって | 終わったら、私を呼んでください。 | 次の作業を自己判断で始めさせない。 |
短い表現にする際も、大人同士の敬意は保ちます。幼児に話すような口調にしたり、分かるまで皆の前で何度も復唱させたりする必要はありません。「下げる」「上がる」など、店の中で特別な意味を持つ言葉は、普段の意味との違いを確かめてから使います。
指導者ごとに「食器棚」「ストッカー」「奥の棚」と呼び方が変わると、言葉と場所を結び付けにくくなります。まず新人が使う範囲だけ、棚の表示、作業メモ、口頭の名称を揃えましょう。店全体のマニュアルを一度に作り直す必要はありません。
「分かりましたか」の代わりに、次の動きを確かめる
説明後は、本人に対象を選んでもらい、安全な範囲で手順を示してもらいます。返事の良し悪しではなく、説明した内容と実際の動きが合っているかを見ます。
編集部が提案する確認の流れは、次の五段階です。必要な安全対策を整えたうえで行い、未習得の危険な作業を試させるためには使いません。
1. 対象を示す。使う物と場所を、実物や写真で一緒に確認します。
2. 短く伝える。一つの作業と、終わりの状態を説明します。
3. 見せる。教える人が手順を示し、注意する箇所で止まって説明します。
4. やってもらう。安全な練習で本人の動きや説明を確かめます。
5. 違いを直す。できた部分を伝え、違った箇所だけを教え直します。

問いかけは「私の説明で、最初にすることは何ですか」「終わったと判断するのは、どんな状態ですか」と具体的にします。「分からなかったら聞いて」だけで終わらず、「迷ったら作業を止めて、この人を呼ぶ」と行動を決めます。責任者が持ち場を離れる日は、代わりに聞く相手も伝えます。
うまくできなかった場合は、本人の記憶力を決めつけず、言葉、見本、練習のどこが不足したかを見直します。説明と同じ言葉を繰り返せても、作業を理解したとは限りません。逆に、言葉で説明するのが難しくても、対象を正しく示せることはあります。確認方法を一つに固定しないことがポイントです。
危険や衛生に関わる説明は、短くしても内容を減らさない
やさしい日本語だけで理解を確認できない場面では、母語の教材や通訳など別の方法を使います。機械、刃物、熱い物、薬剤などに関わる作業は、言葉を省略して急いで任せる対象にしません。
厚生労働省の通知は、外国人労働者の安全衛生教育について、母国語や視聴覚教材など、内容を確実に理解できる方法を用いることを示しています。理解度を確認しながら継続的に教育することも挙げています。[2]同省の案内ページから、外国人労働者向けの手引きや教材を確認できます。[3]
本記事の言い換え表や確認シートは、必要な安全衛生教育、食品衛生上の手順、機器の取扱説明書の代わりにはなりません。温度、時間、量、禁止事項など、自店で守るべき条件を「だいたい」「少し」へ置き換えないでください。翻訳ツールを使う場合も、その訳だけで安全上の指示を確定せず、内容を確認できる人や適切な教材につなぎます。
営業中に十分な説明ができないなら、その作業を任せる範囲をいったん狭めます。「忙しいので今日は口頭だけ」と進めず、誰が、いつ、どの方法で教え直すかを決めてから引き継ぎましょう。
店長一人に抱えさせず、一つの作業から記録する
店舗で使うメモは、新人の評価表ではなく、教える内容を揃えるために作ります。最初は、言い直しが繰り返される一つの作業を選び、教える人同士で確認してください。
次の六項目を空欄から埋めると、別の担当者へ引き継ぐときにも説明の抜けを探せます。個人情報を必要以上に書かず、メモの保管場所は店内で決めます。
| 記入する項目 | 書く内容 |
|---|---|
| 作業 | 今回教える一つの作業名を書く。 |
| 使う物・場所 | 現物の名称と置き場所を書く。 |
| 伝える一文 | 一度に伝える行動を短い文で書く。 |
| 完了の状態 | 何を確認したら終了かを書く。 |
| 迷ったときの連絡先 | その日の担当者と不在時の代わりを書く。 |
| 確認した日・担当 | 確認日と教えた担当者を残す。 |

次の出勤時には、前回と同じ作業を安全に確認し、説明を変えた箇所をメモへ反映します。「教えた回数」だけを増やすより、どの説明が使われたかを追える形にします。複数店舗なら、本部は現場の言い回しを集め、共通化できる名称と店舗ごとの条件を分けてください。設備が違う店へ、手順ごとそのままコピーしないようにします。
日本語で説明するのが難しいときはどうする?
言い換えを重ねても伝わらない場合は、本人が理解しやすい言語や方法を確認します。写真、実物、母語の説明などを組み合わせ、必要に応じて通訳や教育支援を利用してください。日本語を学ぶ意欲の有無と、その場で安全に仕事を任せられるかは分けて判断します。
まず店長と教育担当者で、明日教える一つの作業を選び、対象と終わりが分かる説明に直してみてください。新人がどこで迷うかを確かめると、言い方を変えるだけでよいのか、見本や指導時間を用意する必要があるのかを整理できます。
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受け入れ全体の担当や準備から整えたい場合は、飲食店の入社初日を店長一人に任せない受け入れ準備シートも参考になります。
出典・確認日
確認日:2026年11月4日(日本時間)。
[1] 大阪市「『やさしい日本語』で話してみませんか?」(2026年10月14日更新)
https://www.city.osaka.lg.jp/shimin/page/0000510655.html
[2] 厚生労働省「外国人労働者に対する安全衛生教育の推進等について」(2019年3月28日、基発0328第28号)
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tc4244&dataType=1&pageNo=1
[3] 厚生労働省「外国人労働者の安全衛生管理」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000186714.html
本記事は、日常の作業指示を見直すための一般的な情報です。個別作業の安全・衛生条件は、適用される法令、機器の説明書、自店の手順と照合してください。
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