採用費を「1人いくら」だけで見ない。応募から入社までの詰まりを見つける集計表
採用費を見直すときは、経路ごとの費用に、応募・面接・内定・入社の人数を並べます。「採用単価が高い」という結果だけでなく、どの段階を確かめるべきかが見えてきます。
この記事は、従業員50〜300名ほどの現場職の会社で、採用を兼務する担当者や経営者が「広告を増やすか、今の進め方を直すか」を判断するための入門ガイドです。業界平均との競争ではなく、自社の募集を比較できる状態に整えます。
採用費は、支払額と社内の作業時間を分けて集める
まず、求人広告や紹介手数料などの社外への費用と、原稿作成・連絡・面接に使った社内時間を別欄にします。費用が安い経路でも、担当者の仕事まで少ないとは限らないためです。
厚生労働省は、採用活動を計画、求人方法の決定、求人票作成、選考、採用までの業務として説明しています。請求書だけでは、この全体を捉えきれません。現場責任者が面接に同席した時間も、採用に使った時間として記録します。厚生労働省「雇用したい、募集したい」
本記事では、対象の募集に対応する外部費用を入社人数で割った値を「外部費用ベースの採用単価」として扱います。社内時間も金額に換算する場合は、社内で決めた時間単価と計算範囲を記し、外部費用だけの数字と混ぜません。
採用ページ制作など複数の募集に使う費用は「共通費」に分けます。経路別に配分するなら、配分方法を決めて継続してください。前回は広告費だけ、今回は面接の人件費まで含む集計では、増減の理由を判断できません。税の扱いも統一します。
応募した時期をそろえ、同じ人たちの進み具合を追う
段階別の人数は、同じ募集期間に応募した人を、同じ集計日まで追って数えます。「今月の応募者」と「以前の応募から今月入社した人」を割り算しないことが出発点です。
次の表を、職種・拠点・雇用形態・応募経路ごとに用意します。兼務担当者なら、まず募集中の一職種から始めれば十分です。表は編集部による管理用の提案で、会計上の処理方法を定めるものではありません。
| 集計する欄 | 自社の記入欄 | そろえるルール |
|---|---|---|
| 比較の単位 | 職種/拠点/雇用形態/経路/募集期間/集計日 | 同じ条件の募集を比べます。 |
| 外部費用 | 広告等__円/紹介料__円/共通費__円 | 対象募集分を集め、未確定額は別記します。 |
| 社内時間 | 原稿__時間/連絡__時間/面接__時間 | 面接の準備や現場社員の同席も含めます。 |
| 応募 | __人 | 同じ人の重複応募を二重に数えません。 |
| 面接実施 | __人 | 予定ではなく実施済みの人数にします。 |
| 内定・承諾 | 内定__人/承諾__人 | 内定を伝えた人数と承諾した人数を分けます。 |
| 入社・未決着 | 入社__人/選考中__人/入社待ち__人 | 入社予定の人を入社済みに含めません。 |
人数の元になる応募者一覧には、各段階の日付と現在の状態を残します。不採用、本人からの辞退、連絡不通、進行中は別の状態です。集計表は人数中心にし、個人別の情報を閲覧する人は採用業務に必要な担当者へ絞ります。
経路は「最初に応募を受け付けた窓口」など、社内で数え方を決め、複数経路に応募した同じ人を重複計上しません。求人媒体で知り、自社サイトから応募した人もいるため、分かれば「最初に知った場所」を補助欄に残し、不明分を推測で埋めません。この分類は効果測定用であり、紹介手数料の発生条件を決めるものではありません。
支払いが翌月でも、その費用がどの募集に対応するかは分けて記録します。支払月だけで費用と入社人数を結びつけると、掲載と入社の時間差で単価が変わって見えます。まだ選考中の人がいれば「暫定」と明記し、比較相手も応募から同程度の期間を経た集団にそろえます。

数字が下がった段階で、確かめることを変える
段階別の割合は原因を断定する数字ではなく、確認先を絞る手掛かりです。応募者の辞退と会社の不採用を一括りにせず、元の記録に戻って読み解きます。
面接実施率は「面接を実施した人数÷応募人数」、内定承諾率は「承諾人数÷内定人数」で計算できます。割合だけでなく、分子と分母の人数を併記してください。応募が少ない募集では、一人の進み方で割合が大きく変わります。
応募が少ない場合は、掲載が実際に始まっているか、仕事内容や勤務条件が伝わるかを確認します。媒体で表示・閲覧の数字を確認できるなら、見られていないのか、見られても応募されないのかを分けます。確認なしに、予算不足とも原稿の問題とも決めつけません。
応募はあるが面接実施が少ない場合は、不採用判断、連絡未着手、日程調整中、辞退の内訳を確認します。連絡の運用が課題なら、広告追加より先に担当と手順を整える選択があります。具体策は「応募が来たのに面接につながらない、連絡の流れを見直す」で扱っています。
内定から承諾・入社に進まない場合は、提示条件、説明内容、本人から聞けた懸念、入社予定日を照合します。入社日がまだ来ていない人を辞退扱いにしないでください。理由が分からない場合は「不明」とし、給与など一つの要因へ決めつけないようにします。
求人媒体・人材紹介・ハローワークを同じ軸で比べる
選択肢は、費用だけでなく「社内で何を担うか」「どんな状態の会社に合うか」で比べます。外部に頼めばすべて解決する、自社なら無料でできる、という前提は置きません。
| 選択肢 | 費用の確認点 | 社内に残る仕事 | 合う会社/合いにくい会社 |
|---|---|---|---|
| 求人媒体 | 課金対象と掲載・運用の範囲を確認します。 | 原稿確認、応募対応、選考を担います。 | 応募の入口を増やしたい会社/応募対応が止まっている会社。 |
| 人材紹介 | 手数料、返戻金、違約金の条件を確認します。 | 求める条件の共有、面接、採否判断を担います。 | 対象職種の候補者紹介を求める会社/採用条件が未整理の会社。 |
| ハローワーク | 利用は無料ですが、社内時間を記録します。 | 求人情報の準備、応募対応、選考を担います。 | 公的窓口に相談しながら進める会社/採用業務をすべて任せたい会社。 |
| 自社採用 | ページ制作・更新等の費用を確認します。 | 情報発信、応募への導線づくり、選考を担います。 | 更新担当と運用時間を置ける会社/ページを作れば十分と考える会社。 |
| 採用支援(顧問・コンサル) | 委託する作業と成果物の範囲を確認します。 | 社内調整、条件の決定、採否判断を担います。 | 原因整理や運用改善に支援が必要な会社/依頼内容を決めずに任せたい会社。 |
表の向き・不向きは編集部の実務上の整理です。期間や社内負担はサービス内容で変わるため、採用までの日数を一律に順位づけしていません。
課金の仕組みも同一ではありません。例えばIndeedのスポンサー求人はクリック課金です。ハローワークは無料で利用でき、求人票や人材確保について相談できます。自社採用も、ページへの訪問と応募への対応が必要です。Indeed公式料金案内、厚生労働省の募集案内、中小機構「ホームページ刷新(採用強化)」
人材紹介では、公表された手数料実績だけでなく、自社に提示された条件を確かめます。厚生労働省は2025年4月から手数料率実績の公開と、定めがある場合の違約金規約の事前明示を求めています。実績公開には対象職種・件数の条件があります。厚生労働省の説明資料
なお、建設業務や港湾運送業務には有料職業紹介の制限があります。建設業務には認定・許可を受けた事業主団体による特例もあるため、会社の業種名だけでなく実際の業務と事業者の取扱範囲を確認してください。大阪労働局の制度説明、厚生労働省の建設業務の特例
次の募集では、変える箇所と確認日を一つ決める
集計の目的は、最安の経路を決めることではなく、次の支出や作業をどこへ向けるか判断することです。入社人数がゼロなら単価は計算せず、「入社ゼロ・外部費用○円・選考中○人」と残します。
まず一職種について、請求書と応募者一覧を照合してください。そのうえで、原稿を直す、連絡担当を決める、紹介会社と条件を再共有するなど、確認した原因に対応する変更を一つ選びます。担当者と、結果を再確認する日を決めれば、次回は同じ条件で振り返れます。
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関連記事
- 応募が来たのに面接につながらない、連絡の流れを見直す:面接までの停滞が分かった後に、連絡の手順を整える記事です。
- 面接で何を聞く?仕事に必要な確認と聞かないこと:面接で確かめる内容を仕事に必要な条件へそろえる記事です。
参考文献
確認日はいずれも2026年10月31日。公表日がページ上で確認できない資料は「記載なし」としています。
- 厚生労働省「雇用したい、募集したい」(公表日記載なし):https://www.mhlw.go.jp/roudou-navi/company/02.html
- Indeed「料金および有料オプション掲載について」(公表日記載なし):https://jp.indeed.com/求人広告/価格
- 独立行政法人中小企業基盤整備機構「ホームページ刷新(採用強化)」(公表日記載なし):https://digiwith.smrj.go.jp/it-map/solution/recruitingweb.html
- 厚生労働省「紹介手数料率の実績の公開と違約金規約の明示が必要になります」(適用開始2025年4月1日、公表日明記なし):https://www.mhlw.go.jp/content/001328457.pdf
- 大阪労働局「有料職業紹介事業の概要」(公表日記載なし):https://jsite.mhlw.go.jp/osaka-roudoukyoku/hourei_seido_tetsuzuki/yuryou_muryou_shokugyou/hourei_seido/gaiyou.html
- 厚生労働省「建設業務有料職業紹介事業について」(公表日記載なし):https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/roudoushahakennjigyou_00003.html
執筆:Unitas Pass編集部
Unitas Passは、現場職の会社の採用・定着・人事制度を支援する株式会社Unitasが運営しています。
更新日:2026年10月31日。本記事の集計方法・判断手順は編集部の実務提案です。採用成果を保証するものではなく、個別の会計処理や法的判断を示すものでもありません。制度やサービス条件は最新の公的資料・事業者の提示内容を確認してください。
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