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連合調査でトラック分野の賃上げ妥結額に差。運賃交渉の進捗と原資を共有し、社員に給与の見通しを説明する

連合調査でトラック分野の賃上げ妥結額に差。運賃交渉の進捗と原資を共有し、社員に給与の見通しを説明する

賃上げについて話すとき、決まった給与額だけを伝えるのではなく、その原資となる取引条件をどこまで協議できているかも、説明できる範囲で共有します。ただし、運賃交渉の見込みを、確定した昇給の約束として伝えないことが重要です。

この記事では、運送会社の経営者・人事担当者に向けて、労使の情報交換に関する調査を読み解き、交渉状況と賃金の説明をつなぐ社内メモの作り方を紹介します。労働組合のある企業の調査と、労組のない会社での運用提案は区別して扱います。

妥結額の差は、情報交換だけの効果ではない

連合が2026年10月7日の会議に提出した資料には、交通労連の「2026春季生活闘争の状況について」が掲載されています。7月10日時点の集計では、トラック分野で価格転嫁に関する労使の情報交換が「あった」17組合の妥結額の単純平均は10,116円、「なかった」17組合では5,870円でした。

同じ表の率は、それぞれ3.77%、2.85%です。集計はベース賃金が明らかな組合に限られ、「あった」には価格転嫁の推進を要請したケースも含まれています。業界全体や、すべての中小運送会社を代表する平均ではありません。

この差から「情報交換をすれば4,246円多く賃上げできる」とは言えません。企業の業績、規模、交渉条件などが同じとは確認できず、情報交換だけが差を生んだという因果関係を示すものではないためです。また、表の項目は妥結額であり、すべてをベースアップ額と読み替えないようにします。

それでも、自社の話し合いを見直す問いにはできます。給与の決定に至る前に、経営側と働く側が、何を共有し、何を未確定としていたか。編集部としては、この確認から始めることを提案します。

公的な所得データと、労組の妥結額を分けて読む

国土交通省の「現行の総合物流施策大綱のKPIの達成・進捗状況」には、2024年の年間所得額平均として、大型トラック492万円、中小型トラック437万円、全産業527万円が示されています。こちらは国の資料に掲載された年間所得の比較であり、連合資料の月額の妥結額とは別の指標です。国土交通省資料・4頁

年間所得の差から、個社が今年上げるべき給与額や、社員一人の不足額を決めることはできません。労使で使うなら、現状を話し合う背景として示し、自社の基本給・時間外手当・賞与の内訳を別に確認します。運賃が上がる見込みと、給与へ反映できる額・時期を混同しないための材料にしてください。

賃金・費用を考えるイメージ。日本の硬貨(2018年撮影)。
賃金・費用を考えるイメージ。日本の硬貨(2018年撮影)。 写真:Mokkie / Wikimedia Commons / CC BY-SA 3.0。写真出典 / CC BY-SA 3.0。画像は改変していません。

社員へ伝えるのは、秘密の契約書ではなく状況

共有の目的は、取引先ごとの機密情報を全社員に開示することではありません。賃上げの検討に関係する状況と、会社が次に何を確認するかを、誤解のない範囲で説明することです。

たとえば「主要な契約のうち、価格改定の協議が完了したものがある」「別の契約は作業範囲の確認中」「改定後の入金はまだ先」といった段階を分けます。取引先名や個別単価を出さなくても、交渉済みと交渉中が混在していることは説明できます。

資料を作る前に、経営・営業・人事で共有できる範囲を決めます。守秘義務のある情報、個人別給与、交渉上の未公表条件などを、必要以上に配布しないようにしてください。共有資料に書けない情報がある場合は、その理由と、説明できる範囲を伝えます。

「機密だから何も話せない」と「すべて公開する」の間に、話せる情報があります。社員が知りたいのは取引の細部だけではなく、賃金の検討が止まっているのか、何を待っているのか、自分たちの働き方とどう関係するのかという点です。

四つの欄で、確定と見込みを分ける

労使共有メモは、複雑な経営資料にする必要はありません。決定済み、協議中、未確認、次回の確認という四つの欄を設ければ、話の段階を揃えやすくなります。

欄 記載する内容の例
決定済み 合意した取引条件と適用時期。社内の賃金決定とは別記する
協議中 交渉している費用や条件。合意前であることを示す
未確認 入金時期、費用増など、判断に必要だが揃っていない情報
次回の確認 誰が、何を、いつ確認し、いつ共有するか

これは社内対話のための整理例であり、法定の様式ではありません。「決定済み」の欄に取引条件が入っても、その額がすべて給与へ配分されると自動的に決まるわけではない点を説明します。燃料や外注など他の費用、入金の時期、今後の受注条件も、会社の判断材料になります。

一方で、「原資がない」の一言で終わらせないことも必要です。何が足りず、どの資料が揃えば次の判断へ進めるのかを示します。回答できない質問は、曖昧な期待を持たせる答えに置き換えず、確認先と回答予定を残します。

賃上げ原資の労使共有メモの使い方

以下は実在企業の記録ではなく、社内で埋めるためのひな形です。経営・人事が営業と経理へ確認。見込みと確定を分け、給与の約束に読み替えず次の説明へつなぐ。空欄には自社の資料で確認した値だけを書き、分からない箇所は「未確認」と残してください。

実務シート:賃上げ原資の労使共有メモ。Unitas Pass編集部作成・未記入ひな形。実在企業の記録ではありません。
実務シート:賃上げ原資の労使共有メモ。Unitas Pass編集部作成・未記入ひな形。実在企業の記録ではありません。

現場から聞くのは、運賃の値上げ案だけではない

運転者や配車担当が持っている情報は、価格交渉の前提を確かめる材料になります。営業が把握している契約条件と、現場で起きている作業が一致しているかを、具体的に聞き取ります。

質問例は、「予定にない作業を依頼されるのはどの場面か」「待つとき、開始時刻や連絡先は分かるか」「伝票や受付の手順で繰り返し確認していることは何か」です。社員に交渉責任を負わせるのではなく、会社が条件を確認するための事実を集めます。

意見を受けたら、改善案と決定権限も分けます。現場で変更できる手順なら担当者と期限を決め、荷主との合意が必要なら営業へ渡します。安全や労務上の問題がある場合は、価格交渉が終わるまで待つ課題として処理せず、関係する責任者へ速やかに共有します。

「現場が頑張れば原資ができる」と一括りにすると、追加作業や無理な運行を引き受ける方向へ進むおそれがあります。話し合いでは、減らす仕事、条件を見直す仕事、適切に対価を求める仕事を区別してください。

労組のない会社でも、意見を返す仕組みをつくる

紹介した調査は組合のある企業の集計です。労組のない会社に同じ妥結額を当てはめることはできませんが、情報を共有し、質問への回答を残すという運用は検討できます。

たとえば、経営者が営業所責任者へ説明した後、責任者が自分の理解だけで社員へ伝えると、未確定の内容が決定事項として広がることがあります。共通の説明メモを用意し、現場から出た質問を経営側へ戻す窓口を設けます。説明した日付と、どの版の資料を使ったかも残すと訂正しやすくなります。

勤務時間帯が分かれる職場では、特定の便の担当者だけが説明を聞ける状態を避けます。同じ内容を確認できる方法と、個別に質問できる機会を用意してください。人前で給与の事情を話しにくい人のために、個人に関係する質問は別の窓口へつなぎます。

なお、こうした社内説明は、法令や制度で必要とされる労使の手続を代替するものではありません。労働条件の変更や代表者の選出等が関係する場合は、必要な手続を別途確認します。

次回説明までを、一つの約束にする

賃上げの協議は、一度説明して終わりではありません。交渉結果が出る前でも、前回から何が進み、何が変わっていないかを共有する時点を決めます。

次回の日付だけを置くより、「改定後の請求内容を確認した段階で説明する」「追加作業の実績をまとめ、営業と照合して返答する」など、確認する内容と組にしたほうが、話が止まっている理由を説明できます。予定が変わった場合も、理由と次に分かる時点を知らせます。

連合の適正取引に関するチェックリストも、労使で状況を確かめる際の参考になります。ただし、チェックを埋めること自体を目的にせず、自社で共有できていない情報を選び、実際の資料と照合してください。

最初の一枚には、現在の交渉状況と、社員から聞きたい質問を一つずつ載せてみてください。賃上げの結果を先に約束するより、判断の途中を正確に共有することが、話し合いを続ける土台になります。

読んだ後に会社で決めること

経営者と人事が、営業・経理へ現在の交渉段階と入金予定を確認し、社員に説明できる範囲で労使共有メモを作ります。成果物は「決定済み/協議中/未確認/次回の確認」が分かれる一枚と、社員からの質問への回答一覧です。兼務体制なら経営者が取りまとめ、営業所責任者が現場の質問を集める役割に分けます。

給与への反映が決定している場合は対象者・適用月・内訳を明示します。未決定なら昇給予定額を約束せず、何の確認後に判断するかを伝え、次回説明日を決めます。社内説明の実施と法定の労使手続は別です。最初の説明で終わらず、質問への回答が現場へ戻ったことまで確認してください。

出典と確認日

  • 国土交通省「現行の総合物流施策大綱のKPIの達成・進捗状況」4頁。2024年年間所得額平均。資料を読む
  • 連合「2026年10月7日提出資料」4頁。交通労連の2026年春季生活闘争、7月10日時点の集計を掲載。資料を読む
  • 連合「2026春季生活闘争 適正取引に関するチェックリスト」。資料を読む
  • 確認日・更新日:2026年11月1日。社内共有の方法は編集部の運用提案であり、調査による効果の保証ではありません。個別の労働条件や手続は専門家と確認してください。

著者:Unitas Pass編集部。Unitas Passは、現場職の会社の採用・定着・人事制度を支援する株式会社Unitasが運営しています。

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