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最低賃金の全国加重平均1,177円へ。求人票だけでなく既存社員の給与も点検し、賃金逆転を防ぐ

最低賃金の全国加重平均1,177円へ。求人票だけでなく既存社員の給与も点検し、賃金逆転を防ぐ

最低賃金の改定対応は、求人票の時給を書き換えるだけでは終わりません。勤務地ごとの適用額と発効日を確認し、実際に支払う賃金を時間額で点検したうえで、新しく入る人と既存社員の賃金の説明を揃える必要があります。

この記事は、給与計算や採用を兼務する担当者が、最低賃金改定後に何を、どの順番で確認するかを整理するための記事です。全国平均を自社の適用額に置き換えず、「法律上の下限」と「社内で説明できる賃金差」を分けて扱います。

全国平均1,177円は、自社の最低時給ではない

厚生労働省が2026年9月3日に公表したのは、全都道府県の地域別最低賃金の改定額の答申結果です。全国加重平均は1,177円で、前年度の1,121円から56円上がりました。ただし、全国一律に1,177円が適用されるという意味ではありません。

地域別最低賃金は、地域ごとの金額と発効日で確認します。答申時点で示された発効予定日は10月1日から12月2日までに分かれていました。「10月になったから全拠点で同じ設定に変える」「ニュースの平均額以上なら問題ない」という判断は避けてください。

複数県に工場、営業所、店舗がある会社では、本社の所在地だけで一括確認せず、それぞれの事業場について適用される額を照合します。また、業種によって特定最低賃金の確認が必要な場合もあります。判断に迷う事業場は、所在地を管轄する労働局の案内で確認する対象として残しましょう。

確認表には金額だけでなく、参照した公的ページと発効日を保存します。給与担当者が交代しても「どの日以降の勤務分に、どの根拠で適用したか」をたどれる状態にするためです。答申のニュースと、実際の適用額の確認は別の作業です。

賃金・費用を考えるイメージ。日本の硬貨(2018年撮影)。
賃金・費用を考えるイメージ。日本の硬貨(2018年撮影)。 写真:Mokkie / Wikimedia Commons / CC BY-SA 3.0。写真出典 / CC BY-SA 3.0。画像は改変していません。

月給の社員も、対象となる賃金を時間額に直す

最低賃金の確認は、時給で働く人だけの作業ではありません。厚生労働省は、月給制や日給制などにも最低賃金が適用されると説明しています。月給制では、最低賃金の対象となる月給を、1か月平均所定労働時間で割って比較します。

ここで、給与明細の総支給額をそのまま使わないことが重要です。最低賃金との比較に含めない賃金があるため、基本給と各手当を分け、どの項目を算入するかを確認します。「手当込みなら高いはず」という感覚や、残業が多い月の支給額で下限を判断しないでください。

所定労働時間についても、実際に忙しかった月の勤務時間をそのまま分母にするのではありません。会社の労働時間制度や年間の所定労働日数と照合し、給与担当者が使っている計算の前提を確認します。勤務区分が複数ある場合は、同じ月給でも一律の分母で計算しないようにします。

最初に集める資料は、現行の賃金台帳、雇用契約や労働条件通知の内容、年間勤務カレンダー、手当の支給ルールです。資料が揃わない人を「おそらく大丈夫」として対象から外さず、未確認として担当者と確認期限を置きます。

賃金逆転を防ぐ点検と、法定の不足対応を分ける

法定の下限を満たしていない場合の対応と、経験者の賃金差をどう設計するかは別の問題です。前者を、評価制度の見直しが終わるまで待つことはできません。まず適用日と不足の有無を確認し、必要な是正について給与担当者や専門家と対応を進めます。

そのうえで、同じ仕事を担う既存社員との比較を行います。新規採用者の募集額だけを上げた結果、指導する社員との賃金差が縮まることは、自社で点検すべき論点です。ただし、最低賃金の上昇が全国の会社で賃金逆転を起こしたと断定するものではありません。

比較するときは、年齢や勤続年数だけで順番を決めず、担当できる作業、必要な資格、単独で判断できる範囲、後輩の指導や責任の有無を並べます。たとえば製造現場なら、同じ工程名でも、決められた作業を行う人と、段取り変更や異常時の判断まで担う人では役割が異なります。これは比較のための想定であり、特定企業の事例ではありません。

経営者が確認したいのは、「差があること」そのものより、「差を説明する基準があるか」です。基準が曖昧なまま全員に同じ説明をすると、募集額と既存賃金の関係が伝わりません。法定対応として変更する部分と、役割に応じて別途検討する部分を分けて伝えましょう。

下の記入用シートは、給与担当者が適用額と換算額を記入し、採用担当者が求人・通知・給与の一致を確認するためのものです。役割差の判断は経営者へ戻し、空欄のまま完了にしないでください。

実務シート:最低賃金改定・照合シート。Unitas Pass編集部作成・未記入ひな形。実在企業の記録ではありません。
実務シート:最低賃金改定・照合シート。Unitas Pass編集部作成・未記入ひな形。実在企業の記録ではありません。

兼務担当者は、六つの確認に絞って進める

最初から大きな賃金制度表を作る必要はありません。まずは、適用の根拠から給与設定までを追える六つの確認を、事業場ごとに行います。次の表は、確認漏れを見つけるための整理です。

確認すること 手元で照合するもの
適用額と発効日は正しいか 労働局などの公的案内、事業場の所在地。
対象賃金を区分できるか 基本給、手当の内訳、支給ルール。
時間額に換算できるか 給与形態、所定労働時間、勤務カレンダー。
法定の下限を満たすか 換算結果と、適用される最低賃金。
既存社員との違いを説明できるか 担当範囲、資格、指導や判断の責任。
表示と実際の支払いが揃うか 求人情報、労働条件通知、給与設定。

この表の各行に、確認した人と日付を添えます。判断できなかった項目は空欄のまま回覧せず、「手当の算入可否を確認中」のように理由を短く残します。採用担当と給与担当が別の場合は、最後の行を双方で確認する運用にすると、表示だけが先に変わる状態を見つけやすくなります。

複数の求人媒体を使う会社では、掲載中の募集だけでなく、応募者へ個別に送った条件や、更新待ちの原稿も対象に含めて所在を確認します。ここで行うのは媒体を増やす施策ではなく、応募者が見た条件と会社が実際に支払う条件の食い違いをなくす作業です。

社員への説明は「何が変わったか」を具体的にする

賃金の説明では、改定理由、対象となる項目、適用時期、個別の質問先を分けて伝えます。「最低賃金が上がったので調整しました」だけでは、基本給なのか手当なのか、いつの勤務分からなのかが分かりません。

説明を準備する際の質問は、「今回の変更は法定対応か、役割評価の変更か」「求人の提示額に含まれる項目は何か」「給与明細のどこで確認できるか」です。未決定の評価制度や将来の昇給を、今回の調整と一緒に約束しないようにします。

既存社員から「新しく入る人との違いは何か」と聞かれたときは、他人の給与額を安易に開示するのではなく、自分の役割と賃金決定の基準を説明できる状態を目指します。説明できない項目が見つかったら、担当範囲の整理から始めます。大がかりな制度改定の前でも、何を任せているかの確認は進められます。

説明後の質問は、個別の不満として処理するだけでなく、条件のどこが読み取れなかったかという観点で記録します。適用時期の質問が続くなら通知文を、手当の意味が分からないなら内訳の説明を直します。全員への再説明が必要な内容と、本人の勤務条件に限る内容を分けることで、不要な個人情報の共有も避けられます。

次の採用を出す前に、未確認の人と資料を残さない

募集を継続する場合は、求人原稿を直した時点ではなく、給与設定との照合を終えた時点を社内の完了にします。給与計算を外部へ委託していても、事業場の変更や手当の運用まで自動で伝わるとは限りません。会社側で変更点をまとめ、確認結果を受け取ってください。

適用額、手当、所定時間のいずれかが判断できない場合は、根拠資料を持って労働局や社会保険労務士などへ確認します。最低賃金の点検と、採用・評価の仕組みの相談先は役割が違います。それぞれに何を確認したいかを分ければ、兼務担当者でも作業を前へ進めやすくなります。

この記事を読んだ後に行うこと

給与担当者は、事業場別の最低賃金・発効日と、対象賃金を時間額に換算した一覧を作ります。採用担当者は、その一覧と掲載中の求人条件を照合してください。経営者が決めるのは、法定の不足への対応と、役割に応じた既存社員の賃金差の見直しを分けた対応順です。成果物は「対象者・変更項目・適用日・確認者」が分かる改定管理表とし、未確認の項目には確認先と期限を残します。

出典・確認日

確認・更新日:2026年11月1日。制度の一般的な説明と編集部による実務上の整理です。個別の適用や賃金計算は、公的窓口などで確認してください。

著者:Unitas Pass編集部

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