運送会社の営業資料、車両台数だけで終わらせない。荷主の相談に答える対応条件の整理
運送会社の営業資料は、保有車両の紹介に加えて「どんな荷物を、どの地域で、どの条件なら相談できるか」を示すと、荷主との確認を始めやすくなります。ただし、資料に載せる対応範囲と、その日の配車で引き受けられる条件は分けて管理します。
この記事は、従業員50〜300名ほどのトラック運送会社で、経営者や配車担当者が営業を兼ねている場合を想定しています。法人荷主へ渡す一枚の説明資料と、問い合わせ後に確認する情報を整理します。広告手法や契約書のひな形を網羅する記事ではありません。
営業資料には、相談できる仕事の輪郭を載せる
荷主に自社の対応範囲を伝えるには、車両の種類・台数と、引き受ける仕事の条件を結びつけます。台数が多いか少ないかの説明だけでは、相手の荷物に合う車両か、必要な作業まで相談できるかは分かりません。
最初に、案内したい運送を一つ選んでください。たとえば「県内の工場間輸送」と「遠方への単発輸送」を同じ言葉で説明せず、相談する窓口や確認事項が違うなら区別します。すべてのサービスを一度に整えなくても、担当者が説明できる一種類から始められます。
「何でも運べます」「全国対応」といった広い表現を使う前に、実際の対象貨物、対応地域、設備、手配方法を確認します。自社で運ぶ範囲と、他社の運送を利用して調整する範囲を同じ意味で書かないようにしてください。条件を確認しなければ判断できない仕事は、そのことも案内に含めます。
過去に一度扱った荷物があっても、現在も同じ体制とは限りません。担当者の異動や車両の変更があれば、今も相談を受けられる範囲を配車・運行管理側と確かめます。顧客名や荷物の写真を実績として載せる場合は、掲載許可と取引上の守秘条件を確認し、未確認なら載せません。
荷主へ見せる情報と、社内で確かめる情報を分ける
営業資料には比較的変わりにくい対応範囲を載せ、日々変わる空き状況や個別の運行条件は社内で確認します。配車表をそのまま公開したり、逆に社外用の資料だけで受託を判断したりしない分け方です。
以下は、営業資料を準備するための編集部による確認表です。法定の交付書面を作成するための完全なチェックリストではありません。
| 確認すること | 営業資料で伝える内容 | 問い合わせ後に確かめること |
|---|---|---|
| 貨物 | 相談を受ける品目・荷姿を示します。 | 寸法、重量、数量、取扱条件を確認します。 |
| 地域 | 集荷・配送を相談できる範囲を示します。 | 発着地と、現地への進入・停車条件を確認します。 |
| 車両・設備 | 車種と利用できる設備を示します。 | 荷物との適合、当日の手配可否を確認します。 |
| 日時・頻度 | 定期便・単発などの相談区分を示します。 | 希望日時、回数、時間指定の条件を確認します。 |
| 荷役・附帯作業 | 相談できる作業と確認が必要な範囲を示します。 | 誰が何を行うか、設備・資格等の条件を確認します。 |
| 手配・回答 | 受付窓口と回答までの流れを示します。 | 判断する担当者、回答期限、未確定事項を確認します。 |
| 見積もり | 見積もりに必要な情報の送り方を示します。 | 運送とそれ以外の作業・費用を分けて確認します。 |
表を埋める段階では、会社として未確認のことを「対応可」にしません。営業担当だけでは分からない欄は、配車、運行管理、車両管理、契約の担当へ確認します。専任者がいない会社でも、誰の確認を受けた内容かは残せます。
社内用の表には、確認者と更新日を追記します。社外に出す資料は、公開してよい情報だけを取り出して作成してください。取引先別の単価、ドライバーの個人情報、詳細な運行予定まで営業資料へ載せる必要はありません。

「運ぶ」と「その場で行う作業」を一緒にしない
運送の相談を受けたら、移動そのものに加え、積込み・取卸し・検品など、現場で求められる作業を確認します。「付随することも全部」という説明のまま進めないためです。
公正取引委員会と中小企業庁が2025年12月に公表した集中調査では、運送事業者間の発注書面に、荷待ちや積込み・取卸し等の内容を記載していない事例が確認されました。調査対象の結果であり、すべての運送会社に当てはまる割合を示したものではありません。公正取引委員会「運送事業者間の取引における集中調査の結果」
営業資料では「荷役対応」とだけ書かず、何を相談でき、何を別に確認するかが分かる表現にします。案件の打ち合わせでは、積む人、降ろす人、使える設備、待機が発生する条件などを確認してください。分からない点は荷主側の確認先を決め、未確定のまま運転者へ任せません。
国土交通省の2026年3月31日版Q&Aは、運送の役務と、それ以外の役務の内容・対価を区別して整理しています。積込み・取卸しの料金は原則として運賃と別建てですが、時間制運賃ではその時間内の作業の対価を含められる扱いがあります。その場合も、作業が発生する旨の明記は必要です。国土交通省Q&A・問2-2〜2-4
営業資料の「対応できる作業」は、無料で含める作業の一覧ではありません。料金の扱いと作業範囲は、相手との個別の確認へつなげます。
問い合わせへの返答は、確認の段階を伝える
すぐに受託の可否を決められないときは、問い合わせを受けたことと、追加で必要な情報、次に回答する時点を伝えます。「検討しています」という返事だけで止めないようにします。
初回の確認は、貨物、発着地、希望日時、荷役の条件など、判断に必要な範囲に絞ります。連絡先と依頼の概要を受け取ったら、詳細資料の受け取り方法も案内します。営業資料を見た人に、最初から契約書と同じ量の情報を求める必要はありません。
初回返信の文面を用意するなら、「ご依頼の概要を受け付けました。重量・荷姿と積降ろし方法を確認後、配車担当と検討して回答します」のように、確認中であることを明示できます。これは文面の例で、実際には不足している項目と、自社で守れる回答時刻に置き換えてください。
窓口を担当者個人の電話だけにせず、不在時に内容を引き継げる受付先も決めます。受け取った条件を担当者ごとのメモに分散させないよう、案件名や受付番号でまとめます。次の連絡で何を聞けばよいかが分かれば、荷主に同じ説明を何度も求めずに済みます。
社内では、問い合わせの受付、追加情報の確認、見積もり提示、受託確定を区別して記録します。見積もりを出しただけの案件を、確定した運行と同じ扱いにはしません。返答の担当者が不在でも、現在どの確認を待っているか分かる状態にします。
車両が空いていても、乗務できる人と安全に運行できる条件がそろっているかは別の確認です。厚生労働省は、トラック運転者の拘束時間や休息期間等を改善基準告示で定めています。営業側だけで時間を約束せず、荷待ち・荷役を含む予定を運行管理側と照合します。厚生労働省「トラック運転者の改善基準告示」
条件が合わない場合は、難しい条件を具体的に伝え、日時や依頼範囲を変えて再検討できるか相談します。他社を利用すれば対応できる見込みがある場合も、手配が確定したようには伝えません。無理な受託を営業担当や運転者の頑張りで埋める進め方は避けます。

営業資料の更新と、個別契約の手続きは別に行う
資料の内容に変更があったら、共有元のファイルを直し、担当者が古い版を送らないようにします。一方、個別の運送を引き受けるときは、その案件で必要な契約・書面の手続きを別に進めます。
国土交通省のQ&Aは、真荷主とトラック事業者等が運送契約を締結する際の書面交付を説明しています。営業用の会社案内を送っただけで、個別の依頼内容や対価等の確認が済むわけではありません。自社の事業区分と取引に応じた扱いを、現行Q&Aや管轄運輸局で確認してください。国土交通省Q&A・問2-1以降
まず一種類の運送について、営業担当と配車担当で確認表を埋めてみてください。資料から届いた相談を振り返り、説明不足で聞き直した項目や、対応範囲の誤解があった項目を修正します。反響の件数だけでなく、自社が対応できる相談につながったかを見れば、次に直す説明が決められます。
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参考文献
確認日:2026年10月31日。
- 国土交通省「改正貨物自動車運送事業法Q&A」(2026年3月31日時点)、問2-1〜2-4等:https://www.mlit.go.jp/jidosha/content/001993961.pdf
- 公正取引委員会・中小企業庁「運送事業者間の取引における下請法違反被疑事件の集中調査の結果について」(2025年12月23日):https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2025/dec/251223_unso_tyousa.html
- 厚生労働省「トラック運転者の改善基準告示」(2024年4月施行の改正内容を案内、ページ更新日未確認):https://driver-roudou-jikan.mhlw.go.jp/truck/notice
執筆者・運営者・確認日
執筆:Unitas Pass編集部
Unitas Passは、現場職の会社の採用・定着・人事制度を支援する株式会社Unitasが運営しています。
情報確認・原稿更新日:2026年10月31日。確認表と営業資料の整理方法は編集部による実務提案です。契約書のひな形や、個別の輸送を適法・安全と判断する基準ではありません。取引ごとの法令適用、必要な手続きと運行条件は、最新の公的資料と所管窓口で確認してください。
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