中継輸送を推進する改正法が11月施行。運行・賃金を点検し、「日帰り求人」と勤務実態の食い違いを防ぐ
中継輸送を導入するだけで、すべての長距離便を日帰りにできるわけではありません。求人に書く前に、対象となる便、交替する場所と時刻、遅れた場合の対応、賃金への影響を確認し、実際に約束できる条件へ落とし込みます。
この記事は、中継輸送を採用や定着にも生かしたい運送会社の経営者・兼務人事向けです。法改正の内容と、会社ごとに決める運用を分け、配車・運行管理・労務・採用で話し合う順番を整理します。
11月1日の施行で、何が自動的に変わるわけではないのか
国土交通省は2026年10月16日、中継輸送を推進する改正物流効率化法の施行に伴う関連政令の閣議決定を公表しました。法律は5月20日に公布され、施行日は2026年11月1日です。
法案段階の国土交通省資料では、複数の事業者による共同実施計画の認定や施設整備等を通じて、中継輸送を進める枠組みが示されています。制度の施行と、自社の便で中継輸送を開始できるかは、分けて確認する必要があります。
施行日を迎えたことで、個別企業の運行計画が認められた、補助金が受け取れる、ドライバーの帰宅時刻が決まる、ということではありません。支援の利用を考える場合は、現行の対象要件や手続、受付状況を確認してください。この記事では特定の補助金の採択や交付を前提にしません。
採用面で重要なのは、制度名を求人へ載せることより、自社の勤務条件がどう変わるかを説明できることです。ニュースをきっかけに検討を始めても、実績や条件が未確定なら、その段階を明示します。
年間労働時間の数字を、帰庫後まで見る理由にする
国土交通省の「現行の総合物流施策大綱のKPIの達成・進捗状況」は、2024年の平均労働時間として、大型トラック2,484時間、中小型トラック2,424時間、全産業2,052時間を示しています。年間の比較であり、一便の拘束時間や中継輸送の導入効果を測った数字ではありません。国土交通省資料・4頁
中継地点までの運転時間が短くなっても、待機、引継ぎ、帰庫後の作業が増えれば、勤務全体の負担は別途確認が必要です。試行では出発から帰庫までだけでなく、始業・終業と翌日の始業も記録してください。全国平均を自社の削減目標へそのまま転用せず、実際の勤務と休息の成立を確かめるために使います。
どこで、何を交替するのかを先に決める
中継輸送には、運転者が交替する、トラクターを交替する、荷物を積み替えるなど、複数の組み方があります。どの方式を選ぶかによって、必要な場所、設備、作業、確認事項が変わります。
「途中で引き継ぐ」という一言だけでは、運転者にとっての仕事内容は分かりません。車両をそのまま引き継ぐのか、自社の車両で戻るのか。荷物の積み替え作業があるのか。引継ぎ場所までの移動や、帰りの運行がどうなるかまで、便の流れに沿って確認します。
まず対象を一つの区間や定期便に絞り、出発地、中継地点、到着地、戻り方を図にします。そのうえで、各区間の担当会社と担当者、予定時刻、連絡先を重ねます。時間が合うかだけでなく、その場所で安全に待機・確認・引継ぎができるかも確認対象です。
相手先の運行や施設の条件が未確定なら、社内で決まった部分と分けておきます。自社だけの希望時刻を、共同の確定時刻として採用担当へ渡さないようにしてください。
遅れたときの運用が、働き方の実態になる
通常どおりに運行できる日の予定だけでなく、相手の便が遅れた場合の動きを決めます。「日帰り」の説明に関係するのは、平均的な運行だけでなく、予定が崩れたときに何が起きるかだからです。
確認したいのは、遅延を誰が把握し、どの時点で連絡し、誰が運行の変更を判断するかです。待つのか、別の担当へ切り替えるのか、その日の計画を変更するのか。実行できる選択肢を、運行管理や関係する事業者と確認します。
運転者本人が、その場で相手の担当者とすべてを判断する運用にはしないようにします。会社の判断が必要な場合の連絡先と、連絡がつかないときの扱いを決めます。安全上の問題や労務上の制約があるときに、予定を守るためだけに無理を重ねないことが前提です。
労働時間、休息、安全管理などの遵守は、中継輸送を採用したことだけで満たされるわけではありません。自社の運行条件で適用される基準を、運行管理者や労務の担当者と確認します。本記事の確認表は、これらの専門的な確認を代替しません。
中継輸送の求人条件確認シートの使い方
以下は実在企業の記録ではなく、社内で埋めるためのひな形です。運行と会社間合意を確認した範囲だけ求人に記載。未確認なら日帰りや収入維持を約束しない。空欄には自社の資料で確認した値だけを書き、分からない箇所は「未確認」と残してください。
引継ぎは、荷物だけでなく確認事項を渡す
引継ぎでは、何を確認して次の担当へ渡すかを決めます。会社や担当者が変わる境目で、車両・荷物・書類・連絡事項の確認先が曖昧になるのを防ぐためです。
たとえば、荷物の状態についてどこまで確認し、異常がある場合に誰へ連絡するか。必要な書類や配送上の注意事項を、どの方法で渡すか。車両の扱いが変わる方式では、必要な点検や確認を誰が行うか。こうした項目を、実際に引き継ぐ順に並べます。
責任の範囲は、現場の慣習だけで決めず、契約や会社間の取り決めと照合します。事故や損傷が起きたときの連絡経路も、採用後に初めて知る状態にしないようにします。運転者に判断を求める範囲と、会社へ戻す範囲を分けて研修に組み込みます。
確認項目が増えすぎる場合は、単にチェック欄を増やすのではなく、毎回必要なものと、異常時だけ確認するものを分けます。実際の引継ぎで使ってみて、記録する時間や確認できない項目も見直してください。
求人票へ渡す前の六項目
次の確認表は、採用担当が配車・運行管理・労務へ聞くための例です。運行計画や法定の書類そのものではありません。
| 確認項目 | 担当者へ聞くこと |
|---|---|
| 対象の便 | 日帰りを想定するのは、どの区間・曜日・頻度か |
| 交替の方式 | 人・車両・荷物のうち何を引き継ぎ、誰が作業するか |
| 時間の見通し | 通常時と遅延時で、帰庫の見込みはどう変わるか |
| 判断と連絡 | 運行変更や異常時を誰が判断し、どこへ連絡するか |
| 賃金と手当 | 便の変更で給与内訳に影響があるか、何が確定したか |
| 教育と確認 | 引継ぎ手順を誰が教え、実施できる状態を確認するか |
給与については、長距離運行時の手当や時間外労働などが変わる場合、現在と変更後の内訳を分けて確認します。帰宅しやすくなることと、収入の変化は別の論点です。良い面だけを先に伝えず、応募者が比較に使える条件を整えます。
既存社員に対しても同様です。仕事内容が変わる場合は、運行の説明だけでなく、賃金や勤務の扱いを確認し、必要な手続を踏みます。新しい人を採るための条件が、すでに働いている人へどう適用されるかも揃えてください。
「日帰り可」は、条件付きの説明へ落とす
求人では、実際に確認できた便の条件を具体的に伝えます。「中継輸送なので日帰り」と一括りにするより、対象区間や頻度、例外の扱いを示すほうが、入社後の認識差を確認しやすくなります。
たとえば、架空の表現例として「日帰りの定期便を担当。対象区間と勤務時間、遅延時の扱いは面接時に説明」と書く場合でも、その内容を裏付ける運行条件が必要です。導入検討中なら、確定済みの勤務条件と、今後の計画を分けて説明します。検討中の仕組みを、現在選べる働き方として載せないようにします。
運行を試した後は、予定時刻と実際の時刻、引継ぎで生じた確認、担当者からの質問を記録します。試行が一度うまくいったことだけで、あらゆる状況で同じ結果になるとは判断しません。求人へ載せる条件を決めた人と、実際の運行を見ている人が、同じ資料を確認できる状態にします。
まずは、対象候補の一便について、六項目のうち未確定の欄を埋めてください。帰りやすい働き方を採用の強みにするには、その言葉を支える運行と説明の準備が必要です。
読んだ後に会社で決めること
運行管理者を責任者に、配車・労務・採用で候補の定期便を選びます。成果物は、通常時と遅延時の帰庫見込み、引継ぎ手順、賃金内訳、休息の確認結果を揃えた「求人条件確認シート」です。関係会社との条件が未確定な欄には、確認相手と回答予定を記入します。
安全・労務の基準、相手会社との合意、実運行の確認が揃った範囲だけ、経営者が求人への記載を決めます。日帰りが特定便だけなら対象便と例外を明示し、導入検討中なら現在の募集条件と分けます。時間や収入の見通しが立たない段階では、採用担当が「毎日帰れる」「収入は変わらない」と約束しないことが、読了後の具体的な判断です。
出典と確認日
- 国土交通省「現行の総合物流施策大綱のKPIの達成・進捗状況」4頁。2024年平均労働時間。資料を読む
- 国土交通省「物資の流通の効率化に関する法律施行令及び独立行政法人中小企業基盤整備機構法施行令の一部を改正する政令の閣議決定」(2026年10月16日)。資料を読む
- 国土交通省「物流効率化法の一部を改正する法律案」関連資料(2026年3月6日)。制度の背景・枠組みを参照し、施行日は上記の政令資料で確認。資料を読む
- 確認日・更新日:2026年11月1日。確認表と求人表現例は編集部の提案です。個別の運行・労務・契約・支援制度の要件は関係機関や専門家に確認してください。
著者:Unitas Pass編集部。Unitas Passは、現場職の会社の採用・定着・人事制度を支援する株式会社Unitasが運営しています。
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