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出光興産・BSサミットが整備士不足の研究会。受付・診断・整備を分け、採用・育成・外注の優先順位を決める

出光興産・BSサミットが整備士不足の研究会。受付・診断・整備を分け、採用・育成・外注の優先順位を決める

整備士不足への対策は、「経験者を一人採る」だけではありません。工場で滞っている仕事を分けると、採用すべき技能、今いる人の育成、外部と連携する工程を判断しやすくなります。

この記事は、採用と現場管理を兼務する整備事業者の経営者に向けたものです。資格者を補助者で置き換える話ではなく、必要な資格・認証・設備を守りながら、誰が何を担うかを整理します。

研究会の発足を自社の課題を分けるきっかけに

出光興産とBSサミット事業協同組合は2026年10月19日、自動車整備士不足や車両の高度化などへの対応を検討する研究会の発足を発表しました。サービスステーションの顧客接点と、整備事業者の技術・知見を生かした連携を探る取り組みです。[出典1]

発表されたのは検討の開始です。共同採用や研修サービスがすでに利用できる、参加すれば整備士を確保できる、と読むことはできません。自社にとっての問いは、「整備需要に対して、どの機能が足りていないか」です。

国土交通省は、自動車特定整備事業には事業場ごとの認証や、対象に応じた施設・機器・作業員の条件があると案内しています。[出典2] また、電子制御装置の整備では、型式固有の情報が必要になる点も示しています。[出典3] 人を採用すれば、設備や情報まで自動的に揃うわけではありません。

整備士の求人倍率5.46倍を、自社の仕事の分け方へつなぐ

厚生労働省の職業情報提供サイト「job tag」の自動車整備士ページでは、令和7年度の全国有効求人倍率は5.46倍です。ハローワーク求人統計に基づく、同職業が属する職業分類に対応した数値であり、必ずしも自動車整備士だけの統計ではありません。[出典4]

これは採用にかかる期間や、自社が採れる確率を示す数字ではありません。一方、経験者が来るまで全工程を止めるのではなく、資格・技能が不可欠な工程と、受付や準備など見直せる工程を分けて検討する必要性は示唆します。倍率を理由に資格要件を外さず、求人票では本当に担ってほしい工程を絞ります。

整備工具のイメージ(2008年撮影)。
整備工具のイメージ(2008年撮影)。 写真:Ildar Sagdejev (Specious) / Wikimedia Commons / CC BY-SA 3.0。写真出典 / CC BY-SA 3.0。画像は改変していません。

断った依頼と遅れた工程を別々に見る

最初に集めるのは「忙しい」という感想ではなく、受けられなかった依頼と、受けた後に時間がかかった工程です。前者は対応範囲、後者は業務の流れに課題がある可能性があります。

直近の依頼から、断った理由を分類します。資格・認証の範囲外、必要な機器がない、対応できる人が不在、部品の調達が難しい、予約が埋まっていた、と分けて記録してください。同じ「受けられない」でも、採用で解決する問題とは限りません。

受けた依頼については、受付から納車までのどこで止まったかを見ます。診断の判断待ちなのか、部品の手配待ちなのか、顧客への説明や承認が済んでいないのか。整備作業以外の待ちが多いなら、整備士だけを増やしても同じ場所で滞る可能性があります。

記録は工場全体の詳細な管理表にせず、困っている工程を一つ選んで始めます。たとえば、診断後の見積説明が担当者に集中しているなら、説明の準備と最終確認を誰が行うかを確認します。資格や技能が必要な判断まで、安易に別の人へ渡すことは避けてください。

人と設備と情報を混ぜない

必要なものを分けると、採用条件が具体的になります。「整備全般ができる人」という募集の前に、どの仕事にどの不足があるかを確認します。

確認する要素 自社で整理する内容
資格・認証 対象業務と車種に必要な条件、現在の事業場の範囲。
技能・経験 診断や作業を任せられる人と、確認できた範囲。
設備・機器 必要な機器、使用できる場所、更新・点検の状況。
作業情報 対象車両の情報を入手・参照できるか。
受け入れ時間 指導者が教える時間と、作業予定との重なり。
周辺業務 受付、部品手配、説明、納車で整備士が担う仕事。

この表は法定基準の一覧ではありません。必要な認証や資格の判断は、実際の整備内容に照らして運輸支局などへ確認します。「以前別の工場でできた」「機器を購入した」といった事情だけで、現在の事業場でも実施できると決めないことが大切です。

たとえば、経験者が不足していても、指導者も設備も用意できない状態では、未経験者を採ってすぐ補う計画は立てにくくなります。一方、確認できる技能を持つ社員がいて、教育時間も確保できるなら、担当する作業を限定して育成する選択肢が出てきます。

自社で育てる仕事と外部へ相談する仕事を分ける

頻繁に発生し、自社の強みにしたい工程は育成候補です。発生が少なく、専用の設備や専門的な知識を要する工程は、外部連携を比較する余地があります。ただし件数だけで決めず、顧客への納期と品質、責任範囲まで見ます。

自社育成は、技術や対応力を社内に蓄積できる一方、指導時間が必要です。育成中の人がいることで、ベテランが確認する仕事も増えます。その時間を予定へ入れず、通常の処理件数をそのまま求める計画にはしません。

外部委託は、必要な機能を持つ相手と連携できる可能性がありますが、運搬、引継ぎ、顧客への説明といった仕事が残ります。外注費だけを比較せず、これらの時間や納車予定への影響も記録します。再作業が必要になった場合の対応も、契約前に確認します。

受注条件を見直す方法もあります。一定の車種や作業に集中する、予約枠を調整するなどです。ただし、自社都合だけで一方的に変更せず、既存の約束や顧客への説明を確認します。地域で代わりに対応できる先が少ない場合は、連携先を探すことも含めて検討してください。

図の工程別シートでは、工場長が「人・技能・設備・情報・予約」のどこが不足するかを記入します。求人担当はそのまま人数へ置き換えず、最後の欄で採用・育成・外部連携を選ぶ根拠を経営者と確認してください。

実務シート:整備工場・工程別の不足確認。Unitas Pass編集部作成・未記入ひな形。実在企業の記録ではありません。
実務シート:整備工場・工程別の不足確認。Unitas Pass編集部作成・未記入ひな形。実在企業の記録ではありません。

連携先には費用以外の質問をする

外部の工場やサービスへ相談するときは、できる作業名だけでなく、受け渡しの条件を確認します。発注する側が整備内容を曖昧にしたまま、相手が補ってくれる前提にしないことです。

「どの車種・作業を受けられますか」「持ち込む前に何の情報が必要ですか」「追加作業が分かったら誰に連絡しますか」「完了を何で確認できますか」と尋ねます。納期が変わる場合の連絡時点や、顧客へ説明する担当も合わせます。

さらに、車両や顧客の情報を渡す範囲、取り扱い、記録の保管について確認します。整備に必要な情報と、必要のない個人情報を分け、慣例だけで大量の情報を送らないようにします。具体的な契約や情報管理は、自社の規程や専門家の助言に従って整えます。

回答が曖昧な項目は、発注前に保留として残します。相手を疑うためではなく、現場の担当者が同じ条件で動くためです。少ない件数で確認する場合も、正式な依頼範囲と完了基準を決め、顧客の車両を無計画な試行に使わないようにしてください。

求人票には任せる工程と支援を書く

仕事の棚卸しができると、採用する人に何を任せたいかが明確になります。経験年数だけで募集するより、対象とする作業、入社後の確認、育成の支援を伝えやすくなります。

経験者向けには、扱う車種や工程、使う設備、相談できる相手を整理します。未経験者向けなら、最初に学ぶ範囲、指導者、作業を任せる前の確認方法を説明します。資格取得支援を案内する場合は、実際に決まっている費用負担や条件だけを書いてください。

面接では「何でもできますか」ではなく、「どの作業を、どの程度の支援のもとで担当しましたか」と確認すると、経験の範囲を把握しやすくなります。採用選考と、入社後に自社の手順で作業を任せられるかの確認は分けて行います。前職の経験を、そのまま自社での単独作業の承認にしないことです。

また、受付や部品の担当を見直す場合にも、新しい担当者へ仕事を丸投げしないでください。判断が必要な箇所、整備士に戻す条件、顧客へ約束してよい内容を決めます。周辺業務を分けた結果、整備士が呼び戻される回数が増えたなら、手順や権限の設計を見直す必要があります。

見直しの後は、受注できる件数だけでなく、確認待ちや手戻りがどこへ移ったかを振り返ります。担当変更をしても問題が残るなら、個人の努力不足と決めず、必要な情報が届く順番や、相談できる時間を点検します。採用担当と現場責任者で同じ記録を見ることが、募集条件の修正にもつながります。

工場長が工程を分け、社長が採用か連携かを決める

次の採用打合せまでに、工場長は直近の断り案件と作業待ちを確認し、受付・診断・部品手配・整備・説明のどこに不足があるかを記入します。求人担当は、必要資格、任せる工程、相談相手を一枚の役割表へ整理してください。この着手期限は編集部の提案です。

経営者は、その表を基に方法を選びます。必要な仕事が継続してあり、指導できる人と時間があるなら採用・育成を検討します。特殊作業の頻度が低く、自社で設備と教育を維持しにくいなら、認証範囲と納期・責任を確認できる外部先へ相談します。資格・認証や安全条件を満たせない仕事は受注条件を見直します。成果物は「募集する役割」と「外部へ確認する工程」を分けた決定メモです。

出典と確認日

  1. 出光興産「出光興産とBSサミット、自動車整備業界の課題解決に向け研究会を発足」、2026年10月19日。原文
  2. 国土交通省「自動車特定整備事業について」。原文
  3. 国土交通省「自動車の点検及び整備に関する情報の提供義務」。原文
  4. 厚生労働省「職業情報提供サイト job tag/自動車整備士」、ハローワーク求人統計データ、令和7年度・全国、有効求人倍率5.46倍。職業分類に対応する統計である点に注意。公表原文

確認日・更新日:2026年11月1日。本文の棚卸しや質問例は編集部の提案であり、認証・資格・安全に関する個別判断を代替するものではありません。実施する整備に適用される条件は、関係機関へ確認してください。

著者:Unitas Pass編集部

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